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マイ・バック・ページ ある60年代の物語  川本三郎著(2) [けもの道の幸福]

ノスタルジーのあとは、私的な感想。

前回の記事からずいぶん経ってしまいました。
その間に、震災があったり、社会も少なからず変わってしまって
結婚指輪のWEB販売などを小さく営んでいる私はとまどうばかりでした。

この本を原作とした映画も公開されたようで
川本さんのインタビューもいくつか目にしました。

そのひとつが朝日新聞だったので、
川本さんは、かつて切り捨てられた朝日新聞と和解したんだなと思いました。
もっとも40年という月日が流れているのですが・・・。

私がこの本を読んで一番感じたことは、
大きな組織は、絶対に個人を守ってくれないということなのです。
それは私的な体験がベースになった感想でもあります。

7年前に、20年勤務した大きくて古い会社(良い会社だと思います)を
離れざるを得なくなり
4年前には、大商社S商事に酷い目にあわされました。
その後、応援してくれるたくさんの人達がいて、小さな商売をしていますが
もはや大きな組織に属することはないでしょう。

川本さんは、食べるために、トルコ風呂の突撃取材までしたそうですから
私の方がはるかに恵まれているのだと思います。

それでも、大きな会社で必死に働いている人達の耳元で
”いざとなったら、あなたも簡単に切り捨てられるのですよ”
とささやいてあげたいなと考えます。

世の中で、大企業の労働組合ほど欺瞞に満ちたものはないだろうとか
日経新聞って古い産業界の既得権の維持が目的だなあとか
立場が変わって初めて見えるものは少なくないのです。

川本さんは、朝日新聞と和解出来て良かったなあと、しみじみ思います。
私が住友金属鉱山と和解出来る日は来るのでしょうか。

住友商事のことは、地獄からも恨んでやると誓っているけどね。

 


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マイ・バック・ページ ある60年代の物語  川本三郎著 [けもの道の幸福]

マイ・バック・ページ ある60年代の物語  川本三郎著

平凡社  2010年11月25日初版第1刷発行
1260円    読書時間2時間


1988年に出版された本の復刊だそうです。
当時、丸谷才一氏は、”比類ない青春の書”と評したという。
何とも切ない話しだな、と私は思いました。


川本三郎氏のエッセイや評論は、何冊か読んでいたものの
迂闊にも氏のキャリアはまったく知らなかった。
だから、朝日ジャーナルの記者の身分で左翼思想犯に関わる
証拠隠滅容疑で逮捕、解雇という過去にはひどく驚くしかありません。


私が小学校4年生の時に、連合赤軍の浅間山荘事件があった。
夕方、外から遊んで帰ると(当時は塾なんかなかった)、クレーンの先の大きな鉄球が
家の窓を壊し、催涙ガスを外に出すために雨戸をあける男がいた。
逮捕時には、同僚を銃撃で失った機動隊、警察官の大きな罵声が飛び交っていた
のを覚えている。


その後、リンチ事件が明らかになっていく流れの中での新聞報道もすごかったな。
”お腹の子を取り出せ”という大きな見出しは、小学生にも大きなインパクトを
与えたのだから。


個人的には、ゲバ棒が懐かしい。


通学路の途中に明治大学工学部(当時はのんびりした田舎の大学で、
数年前にはビートたけしが在籍、たけしは田舎をネタにしていた)があったので、
小学校3年生の帰宅時に、50名ほどのささやかなデモ行進に遭遇したのだ。
ゲバ棒を抱いた先頭の3人くらいは、ヘルメットにタオルで顔を隠し、活動家らしかったが
残りは、長髪のノンポリ学生といったところで、小学生もすぐに仲間に入れてくれた。


生田駅までの500メートルほどを、ダラダラと進んだが、あの歩くのではなく
ゆっくりジョギングするような足取りを何と言うのだろう?
なぜか、最後尾にもゲバ棒があって、持たせてもらった記憶がある。
小学生3人は、”安保反対、こづかい上げろ”と、のんきにシュプレヒコールを繰り返した。
(その後、デモ隊は小田急線生田駅のホームに乱入し、ビラをまいた。
 以後、機動隊のバスが時々見張りに着くようになった。)


今から思うと、実に貴重な体験であったわけだが、その時代の背景が理解
出来るようになったのは、ごく最近のこと。
この本も、時代の空気を生々しく伝えてくれます。

(つづく)

 


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ブランジェリタケウチ どこにもないパンの考え方 竹内久典著 [けもの道の幸福]

ブランジェリタケウチ どこにもないパンの考え方 竹内久典著

柴田書店  2009年12月1日3刷発行
2310円 読書時間1時間

大阪の真ん中に、靭(うつぼ)公園という、とてもきれいな公園があって
その公園に面した、大人気のパン屋さんの主人の本です。

パンも、併設されたカフェにも、大好きなのだけど、普通ではないこだわりが感じられて
いつも店の真ん中で作業をしている主人のことが、とても気になっていた。
カフェの帰りに時々、にっこりと”ありがとうございましたあ”とか声をかけられるけど
この人、絶対に怖い人だと確信していた。

その主人が、自らのこだわりを語った本。
ちょっと高価だけど、きれいで、おいしそうなパンの本ですね。
(レシピ本は別にあります)

確かに、”どこにもないパンを作る”という信念のもと、材料、製法、内装から
ディスプレーまで、こだわりにはすごいものがある。
やはりコワイ人だった。

それよりも、僕が一番感心したのが、37歳の主人は、小学生の時に“ケーキ屋になる”と決め
中学校卒業後、定時制高校に通いながら修業を始め(ケーキ屋からパン屋に軌道修正したけど)
ケーキ屋、コーヒー専門店、製パン学校、イタリアン、ケーキ屋と経験。
全てが、”30歳までに自分の店をもつ”という目標に役立っている。
そして、大阪屈指の繁盛店として大成功したわけだ。

自分が立てた目標を、ここまで徹底して実現できる強い意志は
お見事というしかないけど、主人が通ってきた道は前人未到のけもの道。
その苦労は並大抵のものではなかっただろうと思う。

それでも、ここまで自分の好きなことが実現できたのは幸せという他はなく
何も考えずに高校、大学まで進学する、僕を含めて大多数の日本人に
付きつける課題は小さくない。

高校に行かなくても、こんな方法で幸せになれるんだよ、というお手本だもの。

僕は、タケウチのパンを食べながら、”どこにもない結婚指輪”を追求しようと
思いました。


 


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